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パスタロンソフト軟膏10%の後発医薬品は存在する?変更調剤できるの?【薬剤師監修】

2022年8月30日

Teraryo

現役薬剤師5年(認定薬剤師取得)
筋肉専門薬剤師として、正しいボディメイクの知識を広めるため情報発信をしています。
皮膚科門前薬局4年間の経験と大学研究室での経皮吸収の研究の経験を生かし、美肌・肌の悩みを解決します。 多汗症専門薬剤師としてあせっかき・多汗症の悩みを解決します。
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パスタロンソフト軟膏10%の 後発医薬品は存在する? 変更調剤できるの?

こんにちは、薬剤師の寺田りょーすけです。

 

パスタロンソフト軟膏10%って後発医薬品に変えていいの?

後発医薬品調剤体制加算に影響するのか

 

特に皮膚科で処方されるパスタロンソフト軟膏10%。1本あたり20gと、なかなかの処方量となります。

できれば後発医薬品に変えたいですが、パスタロンソフト軟膏10%は後発医薬品に変更可能なのでしょうか。

 

そこで今回は、上記の疑問に簡潔に答えたいと思います。

 

この記事で分かること

  • パスタロンソフト軟膏10%は後発医薬品に変更可能なのか
  • 後発医薬品調剤体制加算に影響するのか

 

 

 

パスタロンソフト軟膏10%は後発医薬品に変更可能か?

 

結論から言うと、不可能です。

 

パスタロンソフト軟膏10%の成分は「尿素」ですが、似たような後発医薬品に尿素クリーム10%という後発医薬品があることはご存知でしょうか。

 

ソフト軟膏という名前がついているせいで非常に紛らわしいですが、ソフト軟膏とクリームは全く別物です。

 

なので、『パスタロンソフト軟膏10%』と処方せんに記載されている場合、おとなしくパスタロンソフト軟膏10%を出すしかないわけですね。

ここで尿素クリーム10%を調剤することは、

マイザー軟膏と処方せんに記載されているのに、ジフルプレドナートクリームを調剤するようなものです。

 

さらに厄介なことは、パスタロンソフト軟膏10%は後発医薬品がないくせに、しっかり後発医薬品調剤体制加算の分母に加えられてしまうことです。

 

後発医薬品調剤体制加算に影響するのか

 

結論から言うと、します

しかもかなり理不尽です。

 

さっき後発医薬品はないって言ったのに、なんで後発医薬品調剤体制加算に影響するのか、訳わからん!納得できない!」と思われている方のために、後発医薬品調剤体制加算の意味不明な仕組みを解説しましょう。

 

ちなみに、後発医薬品調剤体制加算の算定方法は以下のようになっています。

 

参考:厚生労働省の薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について

5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)

 各先発医薬品における後発医薬品の有無及び後発医薬品について、1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)、2:後発医薬品がある先発医薬品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。ただし、全ての後発医薬品が経過措置として使用期限を定められている場合を除きます。後発医薬品と同額又は薬価が低いものについては、「☆」印を付しています。)と3:後発医薬品(先発医薬品と同額又は薬価が高いものについては、「★」印を付しています。)として分類しています。なお、昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品及び令和2年度薬価基準改定における「基礎的医薬品」の対象成分については、「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」は空欄となっています。
 「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」(厚生労働省平成25年4月5日)に基づく後発医薬品の数量シェア(置換え率)※における『後発医薬品のある先発医薬品』が2で分類される品目であり、『後発医薬品』が3で分類される品目であるため、置換え率を算出する際には、こちらの情報をご活用ください。

※後発医薬品の数量シェア(置換え率)=〔後発医薬品の数量〕/(〔後発医薬品のある先発医薬品の数量〕+〔後発医薬品の数量〕)
                 =〔3で分類される品目の数量(★を除く)〕/(〔2で分類される品目の数量(☆を除く)〕+〔3で分類される品目の数量(★を除く)〕)

 

これの2に注目してください。

 

2:後発医薬品がある先発医薬品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。・・・)

 

つまりパスタロンソフト軟膏10%は、『先発医薬品(パスタロンソフト軟膏10%)と後発医薬品(尿素クリーム10%)で剤形(はソフト軟膏とクリームで違う)や規格(10%)が同一でない(その通り)場合を含む(から、尿素クリーム10%はパスタロンソフト軟膏10%の後発医薬品とみなすよ。でも後発医薬品ではないよ)。』という解釈になります。

 

読んでもさっぱりかと思いますが、要は、

尿素クリーム10%はパスタロンソフト軟膏10%と同剤形ではないから後発医薬品として変更調剤しちゃいけないけど、後発医薬品体制加算の計算をするに当たっては剤形違いでも後発医薬品とみなすから、分母に含める=後発医薬品調剤率が下がっちゃうよ!という理屈なのです。

 

Ryosuke
マジで納得できん・・・。

 

錠剤などは類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は可能(例えば、錠剤→カプセル剤OK)ですが、内服薬以外では認められていません。

 

このため、主に外用剤においてこの現象が発生するので、皮膚科門前は頑張って後発医薬品を推奨しているのに、理不尽に後発医薬品の調剤率が低下する目に遭っているのです。

 

これはアレジオンLX点眼液0.1%にも当てはまる事故なので、興味のある方は怖いもの見たさでぜひご覧ください。

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パスタロンソフト軟膏10%が処方されるたびに後発医薬品調剤率が下がる

 

よって、パスタロンソフト軟膏10%が処方されるたびに、後発医薬品調剤率が下がります。

 

パスタロンソフト軟膏10%が分母に加えられることになりますが、決して分子に数字が行くことはありません。

 

処方箋の記載ではおそらく、『パスタロンソフト軟膏10%』となりますが、そもそも後発医薬品がないので、必然的に、先発医薬品であるパスタロンソフト軟膏10%を調剤することになります。

 

これによって、薬局は無抵抗に後発医薬品調剤率が低下することになります。

 

そろそろこれ、改善してくれませんか?

 

後発医薬品調剤体制加算は、『医療費削減のために、後発医薬品の推奨を頑張っていて、成果が出ている薬局へはフィーとして加算をあげるよ!』という制度のはずなのに、そもそも後発医薬品が存在せず、変更の確率が0%の医薬品に対しても分母に含まれてしまうのには納得出来ない・・・。

 

だからといって、外用薬は患部の状態によって同成分でも剤形を使い分けるという特徴があるので、「薬剤師の判断で別剤形にできるようにしろ!」とは決して言いません。

 

しかし、努力の結晶である後発医薬品調剤体制加算が、理不尽に下げられてしまうこのシステム。

どうにかしてくれませんかね?

 

まとめ

 

こんなわけで、パスタロンソフト軟膏10%は後発医薬品に変更調剤できませんよって話でした。

 

薬価本を見れば一目瞭然ですが、薬剤師の中でもイマイチ把握しきれていない人もいたので共有したいと思います。

 

興味のある方は、アレジオンLX点眼液0.1%の悲劇もぜひご覧ください。

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